IoT、AI、ビッグデータ 過去と同様の失敗を繰り返さないために

最近、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ビッグデータというキーワードが様々な場所で聞かれるようになりました。これらは世の中に新たなページを生み出す技術であり、大きなビジネスチャンスを生み出す可能性もあります。

しかし、一方で、とりあえずAIやIoTという流行りのキーワードを使っているだけの人もおり、そのようなキャッチコピーを見ると複雑な気持ちとなります。その理由は、AIやIoTは、各企業の目的を果たすための強力な道具ではありますが、単に流行りのキーワードだけを追いかけていると、道具を入れることが目的となり、失敗するためです。

実は、過去にも同じような状況は何度も起きています。今から20年ほど前、Windows95やWindows98/98SEというOSが発売された時期にも同じような問題が一部で発生していました。
その当時、PCがネットワークに容易に接続できるようになり、急速に職場のOA化が進んでいました。本来は、企業の競争力を高めるために、業務を改善して生産性を高めた後、業務を実現するための道具としてPCやネットワークを導入するという流れになります。しかし、一部では本来の目的が忘れられ、PCやネットワークの導入という手段が目的になってしまい、本来達成したかった職場のOA化が上手くいかないという事例が散見されました。

また、ISO9001:2000 (2000年度版)を導入する時も似た状況でした。ISO9001は品質マネジメントシステムであり、製品やサービスそのものの品質を直接担保しません。ところが、ISO9001:1994 で文書・記録の作成が注目されすぎた影響もあり、2000年度版から継続的改善が必要になったにも関わらず、現場では。何でもよいので文書・記録を数多く作成すればISO9001に適合し、品質も達成したと勘違いする人がいました。そのような人は、品質に関係するかどうか考えずに、自己満足で自分の作りたい(または、作りやすい)文書・記録を作成することに終始しするため、製品やサービス自身の品質改善活動はおろそかになります。結果、残業が増える一方で、品質は低下するという悪いスパイラルに入るケースが散見されました。

そして、最近でも生産管理システムの導入など、各種パッケージソフトの導入で似た状況が起きる場合があります。特にパッケージありきでシステムを導入すると、業務効率化を目指していたはずが、次第にパッケージソフトを入れることが目的に変化してしまい、業務にマッチしないパッケージソフトを無理やり導入しようと時間と資金を浪費したり、誰も導入したパッケージソフトを使わないという状態になっているケースも時折散見されます。

これらの例で共通的に言えることは、本来の目的を忘れ、本来の目的を達成するための手段が目的に置き換わってしまうと失敗につながるという点です。本来の目的が明確であり、本来の目的と手段が上手く適合しなければ、他の手段に変更することは可能です。

しかし、本来の目的を忘れ、本来の目的を達成するための手段が目的に置き換わった途端、本来の目的に不適合な手段としても、その手段を達成することが目的なので無理に活動を継続します。結果、本来の目的が達成できないばかりか、経営上の損失を増やすの道を進みつづけます。

そういう視点で見てみると現状のAIやIoT、ビッグデータ等に関する議論の一部には危うい議論もあります。しかし、AIやIoT、ビッグデータは上手く使いこなせれば非常に強力な道具となります。自分の業務にどのように活用できるのか?どのような効果を得たいのか?等の視点で技術動向を注意深くチェックすることをお勧めします。くれぐれも道具を導入することだけが目的とならないように注意してください。

以上