生産性を高めるコンサルタントの読書術

生産性を高めるコンサルタントの読書術

 

本はなるべく読んだほうが良いとは思っているものの、時間が無いために、ついつい買ったまま「積どく」になっている本がありませんか?このコラムでは、隙間時間を有効に使って効率的に読書する方法について解説いたします。

 

*本は一冊を全部読み通さなくても良い

 

せっかく買った本だからと、一ページ目から順番にページをめくり、一字一句逃さずに一冊の本を読もうとしていませんか?たとえば350ページあるような本であれば、その方法でゆっくり読めば一週間はかかりそうなものです。ですが、これまでの読書の経験から考えてみても、本を一冊読み終えたときに、350ページ分のどこにどんなことが書かれていたかを細かく思い出せる人はそうはいないでしょう。本を読んで記憶に残る部分は、せいぜい、自身の経験や、自分が抱えている課題や問題に近い箇所くらいなものです。小説であれば、主人公のことと、特別に印象的で親近感を抱いたキャラクターが記憶に残っているくらいだと思います。本を読むとは、結局その程度のことなのです。一字一句理解する必要はありません。どうせ、それ程は覚えていられませんから。ですから、本は一冊のすべての箇所を読む必要などないのです。

 

*究極の飛ばし読み、【目次読み】と、【あとがきファースト】

 

本一冊の骨格を簡単に知ろうと思えば、目次が役に立ちます。本を読み始める前に、目次をじっくりと眺めてみてください。まずは、本全体の構成について、そして自分の知りたいことがどのあたりに書いてあるのか、自分の考えと似ている議論の展開か、それとも全くかけ離れた主張が展開されているのか?それを想像しながら目次を見ていくと、自分にとって大切そうな場所がよくわかります。それに対して、本の最後には、だいたい書き手による「あとがき」が載っています。「あとがき」は、著者が本を書くことになった動機や、本文を振り返りながら、書き切れなかった点を補足している場合があります。また、参考文献が載っており、著者がどんな本を参考にして書いたのかが分かり、本のレベルや関連図書との関係性を知ることもできます。こうして本全体の骨格や内容の程度を知ることにより、自身が読むべき箇所がわかります。そのステップを踏んだ後に読み始めた箇所が、想像通りに共感できたり、納得できることが多ければ、改めて章の最初のページから読み始めれば良いのです。必要なさそうな箇所を大幅に読み飛ばし、無駄を省く、価値の高い読書時間が保たれるでしょう。

 

*本の内容をどのように記憶に留めておくか?

 

本は線を引いたり、角を折ったりして、汚して使うことが記憶に留める第一歩です。しかし、電車の中で線を引いたり、感想を書き込んだりすることは、乗り物の振動もあり、大変です。そんなときは、半透明の付箋紙を使いましょう。本の傍らに付箋紙を持ち、気になった文章やキーワード上に、どんどんと貼っていきます。この時、綺麗にまっすぐ貼る必要はありません(理由は後述します)。ページ全体や、大きな図表が大切なポイントの場合には、ページをはみ出して付箋でインデックスの様に印をつけておきます。その時にどの程度、はみ出させるかが重要です。飛び出しが大きいものは「特に重要」、僅かにはみ出させたときには、とりあえず後で振り返っておきたいページ、という意思表示になります。本を一通り読み終えたら、一ページ目からパラパラとめくり、付箋をまっすぐに張り直しながら、付箋の部分だけを読み直します。これは、読み終えて直ぐに行うほうが良いでしょう。そうすると、そのページを読んだときの気持ちや情景が鮮やかによみがえってきます。これが復習となり、記憶の定着を助けます。

 

*付箋の色分けで更に印象深く

 

齋藤孝さんが提唱する“三色ボールペン読書術”という読書法は聞いたことがあるかもしれませんが、私がおすすめするのは、「六色付箋術」を習慣化することです。その例を紹介しますと、本の内容を自身の立場やビジネスに照らし合わせて「赤」…強みとなるもの、「青」…弱みとなるもの、「オレンジ」…機会となるもの、「紫」…脅威となるもの、「緑」…作者の主張やこだわりが感じられる、心に響いた箇所、「黄」…客観的な事実やデータ、このように色分けをして、付箋を文章上に貼り付けていきます。色分けされた付箋は、本を振り返った時に内容の把握が容易になるだけでなく、再読のスピードを上げることができます。つまり、どこにどんな情報が書いてあるのか一目するだけで良くわかるようにします。また、付箋の話題とは離れますが、重要な図や表は、携帯電話のカメラ機能を使って手元に残し、時間がある度に見返すことも、読み終えた本の理解を深めて記憶の定着を高めます。

【付箋を使ったサンプル】WS000035

 

*要約して把握し、本が見えるように棚に収容することの大切さ

一冊の本を読み終えると、感覚的に何らかの印象が漠然と蓄積されます。しかし、本の内容は、必ずといって良いほど、呆気なく忘れてしまうものです。特に細かな用語等は…。それだから、肝心なのは同じ本を二回目に見たときにできるだけ瞬時に、その内容を思い出せるよう、情報を整理しておくことを心掛けることです。情報カード一枚に本の概要をまとめておいたり、大き目の付箋紙にキーワードをまとめて本に挟み込んでおくと、再読する際に大変に役に立ちます。また、その本の存在を忘れてしまっては元も子もありません。読み終わった本は、本棚に並べて、頻繁に手を入れ並び替えたりしてみましょう。紙の本だけでなくとも構いません。電子版で管理する場合には、「ブクログ」(http://booklog.jp/)をお勧めします。視界に本の背表紙が入る度に、その内容や、読んだ時の漠然とした印象が思い出されることでしょう。いくら一冊読み終えようとも、視界に入らない本は、パソコンハードディスク上の、二度と見ることの無いデジカメ写真と同じです。見ることで胸の中に想起された本の記憶は、あなたの中の思考上の誘導灯となって、あなた自身が抱える課題や疑問を幾通りにも氷解してくれることでしょう。本を読むことの有効性は、日頃の本の読み方の工夫によるのです。是非、チャレンジしてみて下さい。