インバウンド増加と接客応対

最近、インバウンドという言葉を耳にすることが多くなりました。インバウンドとは、訪日外国人旅行を意味しており、日本を訪れる外国人旅行客の人数はここ数年で急激に増加してきています。具体的な数値をあげると、2013年に1,000万人を超え、その後、2015年には約1,974万人に達し、2016年には約2,404万人へと増加。そして、2018年には3,000万人を突破しました。

韓国、中国、台湾など、アジア諸国からの旅行客が多く、以前は団体パック旅行で来日していた旅行者が、最近では、個人旅行のスタイルで訪日する旅行者も増えてきています。このような、インバウンドの急増、旅行スタイルの変化などにより、接客の現場でも大きな変化が起こってきています。

ショッピングセンターの中で店舗を構える飲食店の例です。この店舗はフードコートのようなオープンな店舗ではなく、混雑時には入り口で名前を書いて、入店まで店先で待ち行列ができるような独立した店構えの店舗です。ある日、中国からの旅行者家族が来店した時の事。料理を注文した後、パラパラと店の外に出て行ってしまいました。大きなスーツケースがあるので、そのまま、見守っていると、今度は、各々が、他の飲食店で買った料理を持って、店内に戻ってきました。そして、堂々と、店内で注文した料理と、他の店で買ってきた料理を並べて食べだしたそうです。最初、これを見たスタッフは非常に驚いたそうですが、実は、この家族に限らず、最近、このような光景に遭遇する事が多くなったとの事。

実は、中国を初め、アジア圏では、近隣の料理店が皆で協力してお客様を迎えるという考え方が自然な地域があります。「自分の店で料理を注文したら、どんどん、他の店でも料理を買って、持ち寄って食べてね!家族でいろいろな店の料理を楽しんでね!」という考え方なのです。ですから、その家族にとっても、悪気はなく、自然なことだったのです。その背景を知ると「なるほど」と思いました。その後、店舗では、来店された外国人のお客様には事前に店外の料理を持ち込まれないようにお願いをするなどの取り組みを始めました。そのお願いの仕方も、「店外の料理を持ち込まないでくださいね」といきなり、伝えるのではなく、「今から、気を付けて頂きたいことをお伝えしますね」という言葉を挟んでから伝えることで、スタッフの言葉を気持ちよく、聞いて頂けるようになりました。

インバウンド増加という急激な環境変化に伴い、接客の現場でも日々、新しい問題に直面しています。2019年には、ラグビーワールドカップがあり、2020年にはオリンピック、さらに2025年には大阪万博と、今後は欧米諸国からの外国人旅行客も増加していきます。来日された外国人旅行客の方々が、日本に来て良かったと感じて頂けるように、相手の文化背景への理解を深めながら、接客応対についても日々、見直していきたいものです。